Sunday 25 December 2011

ワトソンのブログ

が、ちょっと模様替えしてますね。
(右カラムのリンクからどうぞ)

写真が追加されてますが…拡大不可。でもS2に出て来る場所なのかしら?
コロッセオくらいしか分かりませんが…ローマのコロッセオなのかしら。
なんかエッフェル塔らしきものも見えますが…
「Scandal in Belgravia」ではアイルランドにも行ってるよね。
S2はロンドンの外に飛び出すのかしら。だとしたらますます派手な展開が期待できそうですね〜。
S1はひたすら国内、っていうかほぼロンドンオンリーだったもんね。

S3, S4と進んで行くなら、そうやって世界各地でロケってのもおもしろいね〜。
日本にも来て〜(笑)

戯れ訳『ボヘミアの醜聞』7


私はその晩はベーカー・ストリートに泊まった。翌朝パンとコーヒーで軽い朝食を摂っていると、ボヘミア王が慌ただしく部屋に入ってきた。
「やったのか!」王はホームズの肩をつかんで揺さぶり、燃えるような眼で見つめながら言った。
「まだです」
「しかし望みはあるのだな?」
「はい」
「では、来い。待ち切れん」
「馬車を呼びませんと」
「私の馬車が外で待っている」
「よろしゅうございます」
そうして私達は、ふたたびブライオニー・ロッジへ向かうこととなった。
「アイリーン・アドラーは結婚しましたよ」
馬車の中で、ホームズが告げた。
「結婚だと!いつだ?」
「昨日です」
「相手は?」
「ノートンという英国人の弁護士です」
「愛しているとはとても思えん」
「私はそう願っていますが」
「なぜだ?」
「陛下にとっては、その方が後々ご心配の種が減るからでございます。彼女が夫を愛していれば、陛下のことはもう忘れるでしょう。そうなれば、今後陛下を脅かすこともないわけですから」
「それはそうだが、しかし・・・いや。彼女が私に釣り合う身分でなかったのだけが残念だ、前代未聞の女王になったことだろうが!」
王はむっつりと黙りこんだ。そのまま、馬車はサーペンタイン・アベニューに到着した。
ブライオニー・ロッジの玄関は開け放たれており、年老いた女性が戸口に佇んでいた。彼女は私達が馬車から下りるのを、冷笑をたたえて見守った。
「ホームズ様の御一行とお見受けしますが」彼女が問うた。
「私がホームズだ」答えながらホームズは彼女を見た。物問いたげな、というよりはむしろ、ぎょっとしたような顔つきだった。
「まあやっぱり。奥様から、そろそろお訪ねになるころだと聞いておりまして。奥様は旦那様とお発ちになりました。チャリングクロス駅5時15分発の列車で、大陸へ向けて」
「なんだって!」ホームズは悔しさと驚きのあまり、よろめきながら後ずさった。「イギリスを出たと言うのか?」
「はい。二度とお戻りになりません」
「それで書類はどうなったんだ?」王が吠えるように言った。
「何も残っておりません」
「この目で確かめるさ」ホームズは召使を押しのけ、居間へと乗り込んだ。王と私が後に続いた。家具は引っかきまわされ、棚という棚、引き出しという引き出しが床に散らかっていた。出発の前に急いで荒らして回ったかのようだった。ホームズは呼び鈴の紐に駆け寄った。羽目板を外し、後ろの窪みに手を突っ込んで、一枚の写真と手紙を取り出した。それはイブニングドレスに身を包んだアイリーン・アドラー個人の写真だった。手紙の表には「シャーロック・ホームズ様。次に必要になる時まで、お預けします」とあった。ホームズは封を切り、我々三人は手紙を読み始めた。日付は昨夜の真夜中となっており、やや乱れた筆跡でこのように書かれていた。
『親愛なるシャーロック・ホームズさま。見事なお手際です。私はすっかり騙されてしまいました。火事騒ぎが起こるまで、つゆほども疑っていなかったのです。そこで初めて罠だと気づき、考え始めました。貴方のお噂は数ヶ月前から聞かされておりました。ボヘミア王が探偵を雇うとしたら、貴方を置いて他にないだろうと。ベーカー・ストリートのご住所も把握しておりました。それですのに、例のものの在り処をあっさりお教えしてしまいましたね。私は肝に銘じておりましたのに、あんなに心やさしい、愛すべき牧師様が何かを企んでいることまでは見抜けませんでした。ところで、今ではお分かりでしょうが、私は女優としての訓練を受けております。若者になりすますことなんて、雑作もないんですの。この特技のおかげで何度も窮地をすり抜けてきました。私はあの時、御者のジョンをやって貴方を見張らせ、二階に上がって歩きやすい服装に着替え、貴方が家をお出になったと同時に階下へ降りたのです。
私は貴方をベーカー・ストリートまで尾行いたしました。そして貴方が間違いなく私の考えているお方、名にしおうシャーロック・ホームズその人であると確認したのです。途端にいたずら心が湧きまして、軽率にもご挨拶などしてしまいました。そしてその足で、テンプルの夫の許に参ったのです。
私達は話し合って、すぐさま行動すべきだと結論いたしました。このように手強い方が相手では、それが一番の方法です。明日、貴方がお訪ねくださる頃には、我が邸は空っぽになっているでしょう。写真に関しましてはご心配なきよう、ご依頼の方にお伝え下さいませ。私はずっと良い伴侶を得て、このうえもなく幸せでございます。王様はかつてある女をひどく不当に扱われたかも知れませんが、その者が王様の邪魔をいたすことは今後一切ございません。ただ我が身のお守りとして、そして王様が万一手荒いことをなさろうとした時に心強い武器となってくれるでしょうから、写真はこの身に携えてまいります。その代わり、別の写真を残してゆきます。王様がもしかしたら、その女を思い出すよすがとして下さるかもしれませんもの。本当にそう思っております。親愛なるホームズさまへ。
心をこめて、アイリーン・ノートン・アドラー』
「なんて女だ。まったく、なんて女だ!」この書簡を読み終わった時、ボヘミア王がそう叫んだ。「あの女がいざとなったらどれほど素早いか、そして大胆であるか、君に言わなかったか?彼女の身分が私相応であったなら、全国民に愛される女王となったことだろう!かわいそうに、我々は次元が違いすぎたのだ」
「確かに、まったく次元が違うようにお見受けいたしました」ホームズは冷淡に言った。「陛下、ご依頼の件を思うような成功裏に終わらせることが出来ず、恐縮でございます」
「それどころか!きみ」ボヘミア王は叫んだ。「これ以上ないと言っていいくらいの成功だ。彼女は約束を絶対に守る女だ。写真は火にくべて燃やしたと同じくらい安全だ」
「そう言って頂いて何よりです」
「大変な借りができたものだな。何でも欲しいものを言うといい。この指輪はどうだ」ボヘミア王は蛇の形をした翠玉の指輪を外して手の平に置いた。
「陛下、それよりも頂きたいものがございます」
「言ってみろ」
「その写真です」
王は驚いたようにホームズを見つめた。
「アイリーンの写真だって!もちろんだ、それが欲しいなら」
「陛下、感謝いたします。それではお開きと致しましょう。謹んでお別れを申し上げます」
ホームズは一礼し、王が差し伸べた手に一顧だにすることなく踵を返した。そして私達は帰途に着いた。

そしてこれがボヘミア王国を脅かした大いなる醜聞の顛末であり、我らがシャーロック・ホームズの綿密な計画は完全に裏をかかれる結果となった。彼はかつて女性の賢さについてよく皮肉を言ったものだが、それ以来ふっつりとやめてしまった。そしてホームズがアイリーン・アドラーの、或いは彼女の写真について話す時はいつでも、「あのひと」という最大の敬意を込めた言い回しをするようになったというわけである。

戯れ訳『ボヘミアの醜聞』6


彼の言葉が終わらないうちに、馬車の灯りのにぶい光が通りの角を曲がってこちらへ届いてきた。上等な仕立てのランドウ型馬車で、ブライオニー・ロッジの戸口で止まった。馬車を見て、通りの隅にたむろしていた男の一人が駆け寄り、扉を開けようとした。あわよくば小銭にありつけると思ったのだろうが、同じことを考えたらしい他の男に突き飛ばされた。口論が始まった。そこへ2人の男がやってきて、口論しているうちの一人の加勢をした。すると今度はハサミ研ぎ職人がやってきて、もう一人のほうの肩を持ち、大声で騒ぎ始めた。それは殴り合いへと発展した。
ちょうどその時、アイリーン嬢が馬車から下りてこようと一歩踏み出した。彼女はたちまち殺気立った男達に取り囲まれた。あるものは殴り、あるものは棒きれを振り回している。ホームズは彼女を助けようと駆け出した。しかし彼女に近寄るやいなや、アッと声を上げて地面に倒れ込んだ。彼の顔は血で真っ赤になっていた。それを見た途端、争っていた男達は一斉に逃げ出した。代わりに、乱闘を見ているだけで参加しなかった比較的身なりのいい男達が、彼女と負傷した男に手を貸そうと集まってきた。アイリーン・アドラー(今やこの名字ではなくなったが)はやっとの思いで玄関口まで行った。階段を上がりきり、通りに向かってふり返った彼女の姿はみごとな美しさで、玄関ホールの灯りにその輪郭をあかるく照らしだされていた。
「気の毒に。怪我はひどいのかしら」彼女が言った。
「死んでますよ」と数人の声が答えた。すると別の声が、
「いや、まだ生きてる。でも病院まではもたねえかもな」と言った。
「勇敢な人だね」と群衆の中の女性が言った。「その人がいなけりゃ、あのお姫さまの財布も時計も全部なくなってたろうよ。あの強盗団は手段を選ばないからね。おや、息を吹き返したんじゃないかい」
「このまま通りにうっちゃっておくわけにいきませんぜ。中へ入れてやってもらえませんか?」
「もちろんよ、居間へ運んであげてちょうだい。ちょうど良いソファがあるわ。さあ、こちらへ」
ホームズはゆっくりと厳かにブライオニー・ロッジの内部へ運び込まれ、居間へと寝かされた。私は一部始終を自分の持ち場である窓のそばから見ていた。明りがともった。日よけが上がったままだったので、私は横たわるホームズをよく見ることができた。
彼が自分の演じている役割について、良心の呵責を感じたかどうかは分からない。しかし、アイリーン嬢が負傷した男を介抱するいかにもやさしい仕草、その真ごころのこもった態度を見るにつけ、私はこのように身も心も美しい女性を欺こうとしている自分が心底不埒で恥ずべき存在のように思えた。しかし、ホームズと事前に打ち合わせた内容を今になって放棄するのは、それこそ最大の裏切り行為であろうと考え直した。私は腹をくくり、外套の下に隠し持っていた発煙筒に手をかけた。とにかく、彼女を傷つけようという計画ではないのだから、と自分に言い聞かせた。むしろ彼女が誰かに危害を加えようとしているのであり、我々はそれを阻止しようとしているのだ、と。
ホームズがソファの上で体を起こした。そして、息苦しそうな素振りをした。召使のひとりが走って行って窓を開けた。ほぼ同時にホームズが手を挙げるのが見え、その合図と共に私は発煙筒を居間に投げ込んだ。そして叫んだ。
「火事だ!」
それを言い終わるか終らぬかのうちに、騒ぎを見物していた人々が全員、紳士も馬丁も男も女も口ぐちに、
「火事だ!」
と叫んだ。濃い煙がもくもくと立ち上がり、部屋から窓の外へと流れ出した。誰かが素早く動いた気配がした。しかし次の瞬間にはもう、ホームズがあれは偽の警報だと、皆に言い聞かせているところだった。私は群衆の間を抜け、通りの隅まで移動した。10分後には、ホームズは私の腕を取っていた。私達はすみやかに騒ぎの輪から抜け出した。彼は押し黙って足早に歩いた。やがて、エッジウェア・ロードへ抜ける人気のない脇道に辿り着いた。
「じつにすばらしかったよ、博士」ホームズがようやく口を開いた。「これ以上ないというくらいの出来だ。すべて上々だ」
「で、写真は手に入れたのか?」
「隠し場所は分かったよ」
「で、どうやって知ったんだ?」
「彼女がおしえてくれた。そうなると言ったよ」
「まだ分からん」
「謎めかして見せすぎたかな」彼は笑った。「簡単なことだよ。通りにいた連中はみんなぐるだ。今夜のために待機していてくれたんだ」
「それはまぁ、分かったが・・・」
「騒ぎが始まった時、僕はこっそり赤い染料を手に隠し持って連中めがけて走って行った。そして倒れ、自分の顔を手でひっぱたき、哀れな被害者のふりをしたんだ。古い手さ」
「まぁ、それもそうだろうが・・・」
「僕は運び込まれた。彼女は僕を招き入れるよう仕向けられたんだ。見捨てるわけにもいかないものね。そして居間に寝かされた。僕が一番怪しいと思っていた部屋だ。写真は居間か、彼女の寝室のどちらかにあるはずだ。僕は居間だとふんでいた。僕が空気がほしいと訴えたので、窓を開けざるを得なくなった。だから君が予定通りの行動に出られたわけだ」
「それにはどういう意味が?」
「それこそが一番大きな意味を持っていたんだよ。家に火が付いた。彼女は本能的に、一番大事なもののところへ駆け寄ったんだ。それはあらがえない衝動だ、僕も一再ならず世話になっている。ダーリントンのすり替え事件や、アーンズワース城の一件などでね。母親なら子供に駆け寄るし、若い娘なら宝石箱という具合さ。さて我々のお姫さまの場合には、我々が探しているものがまさに彼女の一番大事なものだったのだよ。火事の号令は百点満点の出来だった。煙と人々の叫び声に、さすがの彼女もうろたえた。彼女は鮮やかに反応したよ。呼び鈴の紐の上にスライド式の羽目板が取り付けられているんだが、その後ろに窪みがあってね、そこに入っていた。彼女は一瞬でそこへ飛んで行った。僕は彼女が写真を引っぱり出すのを目の端で確認した。火事はデマだと聞くと、彼女はそれを元に戻した。そして発煙筒を見つけると部屋から飛びだし、そのままどこかへ行ってしまった。僕は起き上がり、丁寧に詫びを言って、邸から退散したというわけさ。写真をどこか安全な場所に移すべきかと思ったが、彼女お抱えの御者が部屋に入ってきて僕をじろじろ見るので、まずはそこから離れることにした。ちょっとした気の焦りがすべてをフイにしてしまうからね」
「それで、どうするんだ?」私は聞いた。
「捜査はほぼ終了だよ。明日、僕は王様のお伴をしてブライオニー・ロッジへ行く。よければ君も来るといい。僕らは居間に通されて、女主人を待つように言われるだろう。しかし彼女がやって来る頃には、僕らも写真も消えてなくなっている。我が王におかれては、写真を取り戻すことができて満足至極だろうよ」
「明日は何時に?」
「朝8時だ。彼女はまだ起きていないだろうから、動きやすい。それに、早いに越したことはない。彼女は結婚した。生活や習慣がどのように変化するのか分かったものじゃないよ。王にすぐ電報を打つとしよう」
私達はベーカー・ストリートに辿り着き、家のドアの前に立った。ホームズが鍵を探している時、誰かが背後を通り過ぎながらこう言った。
「こんばんは、ホームズさん」
その時舗道には数人の通行人がおり俄かに判じ兼ねたが、その声は外套に身を包み、早足で歩いている細身の若者から発せられたようであった。
「どこかで聞いた声のような気がするが・・・」ホームズはほの暗い通りを見据えながら呟いた。「さて、どこの悪魔の囁きだったかな」

戯れ訳『ボヘミアの醜聞』5


「思いもしない出来事が立て続けに起こったものだな」私は言った。「それで、どうなった?」
「そうだな、僕の計画は完全に狂ってしまった。二人はもう教会を出るところだった。一刻の猶予もならず、かつ大胆に行動しなければならない。しかし彼らは外へ出ると別々の方向に向かった。彼は法曹院に、彼女は自宅の方にだ。『5時、いつも通り公園へ行くわ』彼女が別れ際彼にそう言っていたが、僕はもう聞いていなかった。彼らは去って行った。そして僕は自分の用事をしに行った」
「と言うと?」
「食事さ。ロースト・ビーフとビールを」彼は呼び鈴を鳴らしながら言った。「あまりにも慌ただしかったので食べるのを忘れていた。今夜はそれ以上に忙しいだろう。ところで博士、きみが協力してくれればとても有難いが」
「喜んで協力するよ」
「法律違反をするかもしれんぞ。怖いかい?」
「いいや」
「逮捕は?」
「ちゃんとした理由があるなら」
「理由なら最高のがある」
「じゃあ構わない」
「きみの助けが必要になると思ってたよ」
「それで何なんだい?」
「ターナー夫人(※原文ママ)が食事を持ってきてくれたら話そう。・・・さて」
ホームズは夫人が持ってきた質素な食事をがつがつと食べながら言った。
「時間がないから食べながら話すよ。もうすぐ5時だ、2時間後には現場にいなければならない。アイリーン嬢、いや今は夫人か、彼女は7時には自宅に戻るからな。ブライオニー・ロッジで彼女に面会する」
「それで?」
「きみは何もしないでくれ。僕はもう、ある事を仕掛けておいた。この点は譲れないんだ。何が起ころうと、きみは邪魔してはいけない。いいかい?」
「中立でいろということだな?」
「一切何もするな。たぶん、少し不愉快なことが起きるよ。でも、それに加担しないでくれ。結果的に、僕は家の中に運ばれることになるだろう。四、五分後、居間の窓が開けられる。その窓に出来る限り近づいて待機してくれ」
「分かった」
「僕から目を離さないでくれ。見える所にいるようにするから」
「よし」
「そして僕が手を挙げたら・・・あるものを部屋に投げ入れてくれ、それは今から渡す。そして同時に火事だと叫んでくれ。どうだ、面喰らってないだろうな」
「ちっとも」
「別に恐ろしいものじゃないんだ」彼は言いながら長葉巻のような形の筒をポケットから取り出した。「配管工がよく使う発煙筒だよ。両端に雷管が付いていて、自動点火するようになっている。きみの役割はそれだけだ。僕が手を挙げる、きみが火事だと叫ぶ。かなりの人数が集まるはずだ。そしたら通りの端まで退避してくれ、10分後にそこで落ち合おう。不明な点はないかい?」
「中立を守る。窓のそばに寄る。きみを見張る。合図があったらそいつを投げる。火事だと叫ぶ。そして通りの角できみを待つ」
「その通り」
「任せてくれ」
「素晴らしい。では、僕は次の役割に取りかかるとしよう」
ホームズは寝室へと消えた。そして数分もしないうちに、純で感じのよいプロテスタントの聖職者に姿を変えて出てきた。幅広の黒い帽子、ぶかぶかのズボン、白いネクタイに親しみを込めた微笑み。そして、やや観察好きなのは純粋な善意からであると信じ込ませるその雰囲気の作り方は、かの名優ジョン・ヘア氏に並ぶほどと思われた。ホームズが変えたのは単なる衣装だけにとどまらなかった。表情、立ち居振る舞い、いや魂そのものが、彼の演じる新しい役に従って変化していた。彼が犯罪の専門家でなければ科学界が明晰な研究者を得たであろうが、そうでなければ演劇界が優秀な役者を迎えていたことだろう。
我々は6時15分にベーカー・ストリートを出て、サーペンタイン・アベニューに予定時刻の10分前に到着した。すでに日暮れ時で、我々がブライオニー・ロッジの周辺をうろつく間に街灯が一つずつ灯されていった。ブライオニー・ロッジは静かに主の帰りを待っていた。外観はホームズが簡潔に描写してくれた通りだったが、思ったほど近寄りにくい感じではなかった。それどころか、静かな地域の小さな通りにしてはずいぶん活気があった。隅のほうで粗末な身なりをした男達が煙草を吸いながら談笑しているかと思えば、こちらでははさみ研ぎ師が仕事に励んでおり、また別の場所では二人の守衛が看護婦見習いの女の子にちょっかいを出していた。その傍を仕立てのいい服を着た数人の男達が、葉巻を口にくわえて歩いていた。
「わかるかい」邸の前を歩きながらホームズが言った。「この結婚式のおかげで仕事がやりやすくなった。あの写真は今や両刃の剣というわけだ。我々の依頼人があの写真を婚約者に見せたくないように、彼女もゴドフリー・ノートンには絶対見られたくないと考えているだろう。そこで問題だが、写真は今どこにあるか?」
「まったくだな。どこだろう」
「彼女が常に身に着けているとは考えにくい。キャビネ版だ、女性のドレスに隠せるような場所はないよ。それに彼女は王が写真を取り返そうとしていることを知っている。すでに二回、曲がりなりにも試みているんだからね。そうなると、彼女は持ち歩いていないと考える方が自然だ」
「じゃあ、どこに?」
「普通は銀行か弁護士に預けたと見るだろうな。それ以外である可能性は低い。しかし、僕はどちらもピンと来ないんだ。女性は元来秘密主義だ。自分の秘密は自分だけのものにしておきたいと思わないだろうか。それを他人の手に預けるということがあるだろうか。彼女の保護者は頼れる人間かも知れないが、預けるとなれば彼にどのような間接的な、または政治的な影響が及ぶ恐れがあるかを話さなくてはなるまい、それは出来ない相談だ。まして彼女は、写真をこの数日のうちには発送する予定にしていた。彼女の近くにあると見るべきだろう。そうなると、邸の中のどこかだ」
「しかし、二度も押し入ったのだろう」
「ふん!どこを探すべきか知らなかったのさ」
「で、君はどこを探すんだ?」
「探さない」
「じゃあどうする?」
「彼女に出させるよ」
「まさか。断られるに決まってる」
「他に選択の余地はないのさ。さあ、馬車が戻ってきたらしいぞ。僕の頼んだことを一語一句まちがえるな」

戯れ訳『ボヘミアの醜聞』4


私は翌日の3時きっかりにベーカー・ストリートを訪れたが、ホームズはまだ戻っていなかった。家主の女性によれば彼は今朝八時過ぎに出かけたまま戻っていないということだった。私は何時間でも待つつもりで、暖炉のそばに陣取った。私はすっかりこの事件に魅了されていた。過去に私が記録した二つの事件と比べれば、この事件はとりたてて不気味でも、珍奇でもなかった。しかし、今回の依頼人と来ては一国の王なのである。その事実に加え、ホームズの透徹した洞察力や鋭い分析力を目の当たりにする愉しみもあった。複雑に絡み合った謎を瞬時に解き、それでいてわずかな取りこぼしもない。そんな仕事ぶりはよそでは滅多にお目にかかれない。彼は常勝の男であり、失敗するかも知れないとはいささかも思わなかった。
4時に差し掛かる頃、ようやくドアが開いた。入ってきたのは酔っ払いの馬手であった。乱れ放題の髪にあごひげを生やし、赤ら顔、身なりもひどいものだった。わが友の変装の才を重々承知しているつもりでも、それがホームズだと確信するまでに三度は見直さなければならなかった。
私に軽く頷いて寄越し、彼は寝室へ消えた。5分後に出てきたのはツイードのスーツに身を包んだ、上品な、いつものホームズだった。ポケットに手を入れ、暖炉の前で脚を伸ばして、彼は急に笑い出した。
「いや、まったく!」彼は叫ぶように言ってさらに笑った。笑い過ぎて息が詰まった。椅子の上でのけぞり、へなへなになるまで笑い続けた。
「一体なんだい?」
「おかしくって!僕が今日やったことといったら。それがどういう結果になったか、きみには決して想像がつかないだろうよ」
「つかないね。あのアイリーン・アドラーの動向を探っていたとは思うが。たぶん、家にも行ったのかな」
「その通り。だが、事の顛末は存外に奇妙なものだったよ。まあ待て、話すから。今朝8時過ぎに僕は、仕事にあぶれた馬手の出で立ちでここを出た。厩舎の辺りをうろついていたら同業者の連帯感で皆が同情してくれて、あっと言う間に仲間になった。聞きたい情報が何でも手に入ったよ。ブライオニー・ロッジはすぐに見つかった。小洒落た二階建ての邸宅で、家の裏手には庭があり、通りに面して建て増ししてあった。玄関には頑丈な鍵がかかっていた。広い居間が右手にあった。家具調度は立派なもので、床まで届く長さの窓には我が大英帝国の誇る窓締め金具がついていたが、無論子供でも開けられる。ここではたいした発見はなかった。せいぜい、馬車置き場の屋根から廊下の窓に 跳び移れることが分かったくらいだ。僕はこの家を一巡りし、あらゆる視点から観察したが、それ以外に興味を引くものはなかった。
それで通りへ出てぶらぶらと歩いていたら、庭を囲っている壁沿いに狭い路地が伸びていて、そこに馬屋があるのが分かった。にらんだ通りだ。僕は馬の掃除をしていた男達の手伝いをして、2ペンスの駄賃と、一杯のビールと、手巻たばこを二本手に入れた。そしてミス・アドラーの情報もね。もっとも、そこに辿り着くまでに聞きたくもない近所の人達の噂話をたっぷり聞かねばならなかったが」
「それでアドラー嬢に関しては何を?」わたしは尋ねた。
「彼女は近在の男達の心をすっかり虜にしている。ボンネットがお似合いの、世界で最もたおやかで優美な存在というわけだ。人々は内輪で『サーペンタインのほう』と呼んでいるらしい。彼女の暮らしぶりはつつましやかで、たまに音楽会へ出て歌い、毎日5時に車で出かけ、7時きっかりに帰ってきて晩餐を取る。それ以外に出かける事は殆どない、音楽会の時は別だがね。訪問者は男が一人だけ。でも彼の姿はよく目撃されている。濃い色の肌をした、颯爽とした美男子で、一日一回は必ず訪れる。多い日は一日に二回だ。名前はゴドフリー・ノートン。インナー・テンプル(ロンドンに四つある法曹院の一つ)の人間らしい。御者をやっている男達と友達になると色々いいことがある。ノートンを何度もサーペンタイン・アベニューから乗せているからよく知っているんだ。さて、僕は聞きたいことをすべて聞いてしまうと、ブライオニー・ロッジに取って返した。そして、これからの作戦について考えた。
ゴドフリー・ノートンは明らかにこの事件における重要人物だ。彼は弁護士だ。悪い予感がする。アドラー嬢と彼の関係は?彼はなぜ何度もサーペンタイン通りを訪れているのか。彼にとって彼女はただの依頼人なのか、友人か、もしくは愛人か?依頼人なら、彼女は例の写真を彼の手に渡しているだろう。それ以外の関係なら、その可能性は薄い。このままブライオニー・ロッジで探索を続けた方がいいのか、それともインナー・テンプルの弁護士の部屋に忍び込んだ方がいいのか?判断の分かれ目だ。僕の調査範囲が拡げられたのだ。いちいち細かい話で退屈させていたら済まないが、僕の考えた事を全て話しておく必要があるんだ。そのうち分かるから」
「すっかり引き込まれて聞いているよ」私は答えた。
「僕がまだ迷っていた時、一台のハンソム(一頭立て二人乗り馬車)がブライオニー・ロッジに止まり、急ぎ足で一人の男が降りてきた。凛々しい顔立ちで、肌の色は濃く、ワシ鼻で口髭をたくわえていた。例の男に間違いない。彼は慌ただしい身振りで御者に待つようにと叫び、ドアを開けた召使を殆ど無視してずかずかと上がり込んだ。まるで自分の家のようにね。
彼は邸の中に30分ほどいた。僕からは見えにくかったが、居間を歩き回っているのが窓越しにわずかに見えた。腕を振り回し、興奮した様子で何か喋っていた。
彼女の姿はまったく見えなかった。やがて出てきた彼は、より一層狼狽していた。馬車に乗り込みながら彼はポケットから金時計を取り出し、食い入るように見つめた。『超特急で頼む』彼はそう叫んだ。『最初にリージェント・ストリートのグロス&ハンキーに行って、その後エッジウェア・ロードの聖モニカ教会だ。20分で行けたら半ギニーやるぞ!』
彼らは走り去った。もしかして追いかけなかったのはまずかったかと、僕が思いを巡らしていた時、通りの向こうからきれいな小型のランドウ(四輪馬車)がやって来た。だが御者は上着のボタンが外れていたし、ネクタイは耳にかかったまま、馬具も留め金がしっかり留まっていないありさまだった。その馬車が止まるか止まらないかのうちに彼女が玄関から猛突進してきて乗り込んだ。ちらっとしか見なかったが、花のような面差しだった、男に死んでもいいと思わせるほどの。
『聖モニカ教会へやってちょうだい、ジョン』と彼女は叫んだ。『20分で行けたら半ソブリンあげるわ』
これは追いかけねばと思った。後から追いかけるか、彼女の馬車の後ろに張り付いていくかと考えていた時、流しの馬車がやってきた。御者は僕のみすぼらしい恰好に驚いたようだったが、僕は有無を言わせずに乗り込んだ。
『聖モニカ教会へ』僕は言った。『20分で行けたら半ソブリンだ』正午25分前だった。何が起ころうとしているのかは明白だった。
僕の馬車は速かった。想像以上の速さだったが、彼らの方がまだ速かった。僕が着いた時、彼らの馬車は教会の玄関に繋いであって、馬からは湯気が立っていた。僕は支払いを済ませて教会へ入った。中にいたのは僕が尾けてきた2人だけで、他には誰もいない。僧衣をまとった牧師が戒めるように彼らに話しかけていた。彼ら三人は祭壇の前に立っていた。僕は端の通路を、偶然立ち寄っただけの道楽者のようにのんびり歩いた。すると驚いたことに祭壇の三人が僕の方を振り返り、ゴドフリー・ノートンが必死の形相でこちらへ駆け寄ってきた。
『ああ、助かった』彼は言った。『君でいい。こっちへ、さあ来たまえ』
『何ですかい?』と僕は聞いた。
『いいから来るんだ、後3分しかない。3分経ったら違法になる』
僕は半ば引きずられるようにして祭壇まで行った。そして訳が分からぬままに、耳元で囁かれる言葉をオウム返しに唱えた。そして、何かの保証人にさせられた。つまりこうだ。僕は、未婚女性であるアイリーン・アドラー嬢と、これまた独身者であるところのゴドフリー・ノートン君の結婚式を粛々と手助けしていたんだ。すべてはあっという間だった。ノートン君とアドラー嬢は両側から感謝の言葉を雨とふらすし、牧師は僕の面前でにっこり笑っているし、あんなに自分が道化じみて思えたのは生まれて初めてだったよ。それを思い出すだけで、あんなに笑えてしまって。おそらく彼らの婚姻許可書が略式だったので、保証人なしに結婚式を挙げる事を牧師が拒否したのだろう。そこへ僕がのこのこ現れたものだから、新郎新婦にとっては外へ飛び出して手当たり次第に介添人を探すという手間が省けたわけさ。花婿は僕にソブリン金貨を一枚くれたよ。だから不思議な巡り合わせの思い出に、懐中時計の鎖にでも繋いでおこうと思ってね」

戯れ訳『ボヘミアの醜聞』3


彼がそう言い終わらないうちに馬のひづめの音と車輪が角を曲がる音が聞こえ、間もなく玄関の呼び鈴が鋭く鳴った。ホームズは口笛を吹いた。
「二頭だな」彼は窓に近づいて外を見た。「やっぱりそうだ。瀟洒なブロアム型馬車に馬が二頭。美女だぞ。一頭150ギニーは下るまい。ワトソン、もしこの事件に何も見るべきところがなくても、金だけはありそうだ」
「じゃあそろそろ行くよ、ホームズ」
「どうしてだい。そこにいてくれよ。きみがいなきゃ、僕はボズウェルを失ったジョンソンも同じだ。約束する、この事件は面白くなるよ。見逃す手はない」
「しかしきみの依頼人が・・・」
「気にするな。僕はきみの助けが必要かもしれないし、それは彼だって同じさ。さあ来たぞ。頼むから座って、ワトソン、その肘掛椅子に。そしてきみの注意をありったけ僕たちに注いでもらいたい」
重くゆっくりとした足取りが階段を上り、通路を渡って部屋の前で止まった。ドアがノックされた。うるさく、高圧的な音だった。
「どうぞ」とホームズが言った。
入ってきたのは二メートルもあろうかという大男だった。胸板は厚く、太ももはヘラクレスのように逞しかった。豪華な衣装を身につけていたが、英国では悪趣味とも取られかねない豪華さだった。アストラハン産の重厚な革を使ったダブルのコートは袖口と前見頃に切り込みが入っていた。その上に濃い青の外套を羽織っており、裏地は燃えるような赤い絹だった。そして首元に大きなエメラルドをつけ、外套の留め具にしていた。長靴はふくらはぎの真ん中あたりまで来る長いもので、柔らかそうな茶の毛皮で縁どられていた。彼の全体的な印象は野性的な豪奢とでも言うべきものだった。
彼はつば広の帽子を手に持っていた。そして顔の上半分、頬骨あたりまでを黒い仮面で隠していた。仮面は部屋に入る直前に着けたものらしく、手でまだ触っていた。彼の顔下半分から察するに、強い個性の持ち主のようだった。厚く垂れさがった唇、長くて丸みのない頬からは、頑固なまでの意志の強さが見てとれた。
「手紙は受け取ったかね?」男は威圧的な声で言った。明らかなドイツ語訛りがあった。「訪問すると書いておいたが」男はどちらがホームズと判じ兼ねたらしく、私たちを交互に見た。
ホームズが返事をした。「どうぞお掛け下さい。こちらは友人で助手のワトソン博士です。時々、好意で事件の手伝いをしてくれるのですよ。どうお呼び申しましょうか?」
「フォン・クラム伯爵だ。ボヘミアの貴族だ。この男、君の友人ということだが、名誉を重んじ分別をもち、この極度に重要な案件を任せてもよい人物なのだろうな?そうでなければ、ぜひ君ひとりと話したいが」
私は立ちあがったが、ホームズに手首を掴まれ、椅子に押し戻された。
「二人でなければお受けしません。彼に対しては、私に対するのと同じように、なんでも話してくださって結構です」
伯爵はその大きな肩をすくめた。「では始めねばなるまい。まず、これから話す事を二年間極秘にすることを約束してほしい。二年経てば、事の重要性も薄れるだろう。現段階では、これは全ヨーロッパの歴史を変えてしまう可能性すら秘めている」
「お約束します」とホームズが言った。
「私も同じく」
伯爵は続けた。「この仮面については容赦してもらいたい。私を雇ったある高貴な人物が、私の顔を君に知られることを望んでいないのだ。それから、フォン・クラムという名は私の実名ではない」
「そうでしょうね」ホームズがそっけなく言った。
「一触即発の局面なのだ。これが巨大スキャンダルに発展し、ヨーロッパ王家の一つを窮地に陥れることのないよう、細心の注意を払わねばならない。はっきり言えば、代々ボヘミア王位を継承してきたオムシュタイン家に関わる一大事なのだ」
「そうでしょうね」ホームズは雑作もないといった風に呟きながら椅子に座り直し、瞳を閉じた。
伯爵は明らかな驚きの色を見せた。そして、たった今ヨーロッパで最も明敏な判断を下すことができ、最も精力的に活動できる人物であるとみえたにちがいない男のものうげな、無気力な態度を見た。
「もし陛下がこのまま、勿体ぶった話し方をお続けになるなら」ホームズは言った。「僭越ながら申し上げたいと思いますが」
陛下と呼ばれた男は椅子から跳び上がった。明らかに動揺したらしく、せかせかと部屋を歩き回った。しばらくすると男は自暴自棄な素振りを見せ、仮面をかなぐり捨てた。「そうとも」彼は叫んだ。「私は王だ。身分を偽るなんてばかなことだ」
「まったくですな」ホームズが返した。「陛下がボヘミア王、カッセル-フェルスタイン大公、ヴィルヘルム・ゴットライヒ・シギスモンド・ フォン・オムシュタインその人であるという事は、陛下がこの部屋に足を踏みいれられた時から明らかでしたから」
「しかし、理解してもらいたい」王と呼ばれた男はもう一度座り直し、広く白い額を手で撫でつけながら言った。「私は自分自身で行動するということに慣れておらん。しかもこの件はあまりに扱いが難しいので、誰に託すにしてもその者が私の意のままに動いてくれなければ困るのだ。このためにわざわざプラハから、身分を隠してやってきたのだぞ」
「では、お話し下さい」ホームズはそう言い、また目を閉じた。
「簡潔に話すと事実はこうだ、五年ほど前ワルシャワに長期滞在した折、とある女性と近づきになった。アイリーン・アドラー、その筋では有名な人だ、君も知っていよう」
「博士、僕の目録をみてくれないか」ホームズが目を閉じたまま呟いた。長年、ホームズは事件に関わった人間や事物をまとめて目録を作る習慣を持っている。一瞬で思い出せない人や物に出喰わしたときは、その目録を見ればよいわけだ。今回はヘブライ人の宗教指導者と、深海魚についての論文を書いた軍隊の司令官の間に彼女の経歴を見つけた。
「さて、見てみよう」ホームズが言った。「1858年ニュージャージー生まれ。ふむ。コントラルト歌手。スカラ座での公演。ほう。ワルシャワ王立歌劇場のプリマドンナ、そうか。オペラ歌手は引退、ロンドン在住・・・なるほどね。陛下、察しますにこの女性と昵懇になり人目につくと困るようなお手紙を書かれて、今はそれを取り戻したいと熱望されているのですね」
「その通りだ。しかしどうやって・・・」
「極秘に結婚されたというようなことは?」
「それはない」
「法的な書類や証明書はないのですか?」
「ない」
「分かりませんね。ではこの女性がその手紙を恐喝やその他の悪事に使おうとしても、その手紙が本物だと証明する手立てはないのではありませんか?」
「筆跡は?」
「簡単に真似できますよ」
「私専用の便箋だ」
「盗まれることだってあるでしょう」
「私専用の封蝋だ」
「偽造ですな」
「写真もある」
「買ったんでしょう」
「私達二人の写った写真だ」
「おやおや、それはいけませんな。ずいぶんと思慮のない事をされました」
「のぼせあがっていたのだ」
「御身を著しく危険にさらされた」
「当時はまだ皇太子だった。若さゆえの過ちだ、今はもう三十になったが」
「何としても取り返さねばなりませんね」
「手は尽くした。みな失敗だ」
「金額が足りないのでは?」
「彼女は売らん」
「では盗んでは?」
「これまでに五回試みた。私の手の者が彼女の家に二回押し入った。他にも、彼女の旅行中に荷物を奪ったことが一回。彼女を待ち伏せたこと二回。いずれも失敗だ」
「手がかりになるようなものは何も?」
「皆無だ」
ホームズは笑った。「それはまた、手こずらされたものですね」
「私には大問題なのだ」王は憮然として言い返した。
「仰せの通りです。それで、彼女は写真をどうしたいと?」
「私を破滅させたいのだ」
「どうやって?」
「私は結婚を控えている」
「そのように伝え聞いております」
「スカンジナビア王の第二息女であるクロチルド・ロスマン・フォン・サクスメニンゲン王女だ。彼女の一族の厳しい戒律は知っているだろう。彼女自身が非常に繊細な魂の持ち主なのだ。私の行動に少しでもやましい点があれば、この結婚は白紙となるだろう」
「アイリーン・アドラーは何と言っているのです?」
「先方にその写真を送りつけると言っている。本気だろう。彼女が送ると言えば必ず送る、私には分かる。君は彼女を知らんかもしれんが、鋼鉄の精神を持っているのだ。美しい女だが、腹の据わり方は男でも敵わないくらいだ。私が他の女性と結婚するとなったら、彼女はどんな手を使ってでも邪魔しに来るだろう。それがどんな手であろうと、な」
「その写真がまだ送られていないと断言できますか?」
「できる」
「なぜ?」
「彼女は婚約が正式発表される日に送ると言っている。来週の月曜日だ」
「ではまだ三日ありますな」ホームズはあくびをしながら言った。「幸運です。今、緊急を要する事件が一、二ありまして。陛下はしばらくはロンドンに滞在なさいますね?」
「フォン・クラウン伯爵の名でレンガムに宿を取っている」
「結構です、では進捗状況を手紙でお知らせ申します」
「ぜひそうしてくれたまえ。心配で何も手につかないからな」
「お支払いの方は?」
「好きなだけ」
「確かですか?」
「あの写真を取り返してくれるならわが領土の一部をくれてやってもいい」
「とりあえず、当座の資金が必要ですが」
王はセーム革の鞄を外套の下から取り出し、テーブルの上に置いた。
「金貨が300ポンドに、紙幣が700ポンド分ある」
ホームズは手帳に領収証を走り書きし、王に手渡した。
「それで、マドモアゼルの住所は?」
「セント・ジョンズウッド、サーペンタイン・アベニュー、ブライオニー・ロッジだ」
ホームズはそれを書きつけた。「最後にもう一つ」彼はたずねた。「その写真はキャビネ版ですか?」
「いかにも」
「承知しました、それでは失礼します、陛下。まもなく良いお知らせができるものと存じます。ワトソン、今日はどうも有難う」王室の馬車が車輪をきしませながら通りを遠ざかってゆくのを聞きながら、ホームズは付け足した。「差支えなければ明日の午後3時、寄ってくれないか。この件についてちょっとお喋りがしたいから」

戯れ訳『ボヘミアの醜聞』2


1888年3月20日の事であった。私は開業医として仕事を再開しており、往診の帰りにたまたまベーカー・ストリートを通りかかった。よく見慣れたドアの前まで来ると、私は求婚時代や緋色の研究などの暗い事件を懐かしく思い出した。途端にホームズの顔が見たくなり、彼があの常人にはるか及ばない能力を駆使する様子を再び見たいと思った。
彼の部屋は明るくてらされていた。私が見ている間だけでも、彼が二度窓辺を横切るのが分かった。背の高い、すらりとした影法師が日よけに映ったからである。彼は勢いよく、しかし熱心に考え込みながら部屋を往復していた。頭は深く垂れ、両手は後ろで組まれていた。私は彼の気分や癖をよく覚えていたので、彼の行動が何を意味しているかすぐに分かった。仕事に入ったのだ。薬でつかのまの幻覚に酔うことをやめ、代わりに新しい難題を得て嬉々としているのである。私は呼び鈴を押し、かつて私の一部であった部屋へと足を踏み入れた。

ホームズはいつでもそうだが、私を見ても特に態度を変えなかった。だが、喜んでいたのではないだろうか。ほとんど喋らなかったが、優しい眼差しで私に椅子をすすめ、葉巻のケースを送って寄越し、酒の入った飾り戸棚と隅の暖炉を指し示した。そして火のそばにたち、何か自問自答しているような彼特有の物腰で私を見た。
「きみは結婚向きだったらしいな」彼は言った。「7.5ポンドは太っただろう」
「まさか。7ポンドだよ」と私は答えた。
「これでも控えめに言ったつもりだがね。それに、また医者の仕事を始めたのか。聞いていなかったな」
「どうして分かったんだ?」
「見れば分かるよ。しかも最近ずぶ濡れになったろう。そして君の使用人は世にも不器用な上に気が利かないらしい」
「おいおい」私はさえぎった。「まいったな。僕は魔女と話をしてるのか、世が世なら火あぶりにされるぞ。確かに僕は野歩きに出かけて、大雨に降られたよ。木曜日のことだ。だけど当然服は着替えたし、君がいまだにそれを言い当てられるのは不思議だね。使用人については、彼女の名前はメアリ・ジェーンと言うんだが、確かに気が利かない。あまりにひどいので、妻が最後通告を出したところだ。どうして分かったんだい?」
ホームズは含み笑いをし、その長くて神経質そうな手を擦り合わせた。
「別に簡単なことだがね」と彼は言った。「君の左の靴の内側、ちょうどマッチを擦るところだが、革の部分にほぼ平行に6つの切り傷がついている。誰かが乾いた泥をそぎ落とそうとして、しごく乱暴に靴底の周囲をひっかいた証拠だよ。つまりそのぐらい泥がつく天候の中を君は歩いたということだし、その泥を取るために靴に穴まであけてしまう君の使用人は優秀とは程遠いというわけさ。まぁ、ロンドンじゃ標準的といえるがね。君の仕事についてだが、君は部屋に入ってきた時ヨードホルムの匂いをさせていたし、君の右手の人差し指は硝酸銀で黒く変色しているし、それにシルクハットの右側が膨らんでいる。聴診器を隠しているんだろう?医者でなかったら一体なんだというくらいだ」
説明されてみると、私はことの単純さに思わず吹き出してしまった。「種明かしを聞くとばかみたいに単純で、僕でも出来そうだと思ってしまうよ。それでも一連の推理の訳をいちいち聞いてみないことには、まるで見当もつかないんだからな。僕にだって、君に負けないくらいの観察眼はあると思うんだがね」
「目はあるね。確かに」ホームズはそう言いながら葉巻に火をつけ、肘掛椅子にどさりと座りこんだ。「ただ、見ているだけで観察していない。これが大きな違いだよ。たとえば、この部屋に上がってくる時の階段だ。君も何度も見ただろう」
「もちろん」
「何度見た?」
「回数かい?何百回だろうよ」
「じゃあ、階段が何段あるか知っているか?」
「数えたことないよ」
「ほらね。見てはいるけど観察していないだろう?僕が言いたいのはそこだよ。階段は17段だ。見て、更に観察している人間ならそれを知っている。さて、それはそうと君は事件といえば興味を持って、いつかは僕のささやかな功績の一つ二つを記録して発表してくれたこともあったっけね。それならこいつも興味があるだろう」
ホームズは、テーブルの上に広げられていた厚い薄桃色の便箋をこちらに向かって滑らせた。「さっき届いたばかりなんだ。読んでみてくれたまえ」
日付はなく、署名も差出人の住所もない手紙だった。
『今夜7時45分に訪問者がある。その紳士はある深刻な事件について貴君の助言を得たいと思っている。貴君が某王家に果たした役割をみて、本件を信頼して依頼するに足る人物と認めるものだ。本件は極めて重要である。これは誇張ではない。貴君の評判をじゅうぶんに吟味した上で依頼する。7時45分、必ず自宅にいてもらいたい。訪問者は仮面で顔を隠しているかも知れないが、無礼と取られること無きよう』
「これはまた、謎だらけの手紙だな」私は言った。「どういう意味だ?」
「まだ何とも言えない。情報が不足している状態で無理に仮説を立てるのはよくない。仮説にあてはめようとして、知らないうちに事実を曲げてしまう恐れがあるからね。しかし、この手紙自体はどうだ。何か気付く事はないかい?」
私はその手紙を注意深くしらべた。そして、わが友の要領をまねてこう言った。
「これを書いた男はおそらく資産家だろうな。二束三文じゃ買えないような紙だよ。変な堅さがある。かなり丈夫そうだね」
「変な、ね」ホームズが答えた。「そこだよ。これはイギリス製の紙じゃない。明かりにかざしてみたまえ」
言われた通りにしてみると、紙にある文字が織り込まれているのがわかった。それぞれ”Eg”、”P”、”Gt”と読めた。
「何だと思う?」とホームズが聞いた。
「製造者の名前だろう。名前と言うより、頭文字かな」
「そうじゃない。Gtはゲゼルシャフトの略だ。ドイツ語の『会社』で、Gtは英語で会社をCoと略したりするのと同じものだよ。Pはもちろん紙のことだ。最後にEgは何か。ヨーロッパの地名辞典をみてみよう」
ホームズは書棚から分厚くて茶色い本を取りだした。
「エグロウ、エグロニッツ・・・あったこれだ、エグリア。ドイツ語圏のボヘミアにある町だ。カールスバートの近傍。『ヴァレンシュタイン将軍死没地として知られ、ガラス製造・製紙などの産業が有名』はっは、これをどう思うね?」
彼は煙草を深く吸い、満足そうに紫煙をくゆらせた。瞳は輝いていた。
「じゃあ、ボヘミア産の紙ということだね」私は言った。
「その通り。そしてこの手紙を書いたのはドイツ人だ。文章をよく見たまえ。フランス人やロシア人なら、動詞の使い方にもう少し気を払うよ。つまり、このドイツ人の要求は分かった。彼はボヘミアの紙を使い、顔を隠して登場したがっている。そういうことだ。さて、どうやら彼が来たらしいぞ。これで謎が解けるかな」

Saturday 24 December 2011

戯れ訳『ボヘミアの醜聞』1


シャーロック・ホームズは彼女のことを、いつも「あの女(ひと)」と呼んだ。実際の名前で呼ぶところを見たことはほとんどない。その人の存在ひとつが、彼女の属する性を代表するに足りるかのようだった。
アイリーン・アドラーに対して、ホームズがたとえほのかであれ恋心を抱いていたとは思えない。あらゆる感情、殊に恋愛感情というものは、冷たく精緻で均整のとれた彼の精神とは相容れないものだった。ホームズは論理的思考と観察眼にかけては地上最高の機械と言っても良いほどだったが、恋人としてはまるで支離滅裂であろうと思われた。愚弄と軽蔑をもってしか、やさしい感情を語る事が出来ないのである。
普通の人間にとって、そうした感情は決して悪くはない…人の動機や行動を見抜く力は弱められてしまうが。しかしホームズのような訓練された理論家にとって、それは彼の精神を無意味に乱すだけである。細心の注意を払って入念に構築された彼の精神世界は、そのような感情の侵入によって支障を来してしまう。繊細な機器に入り込んだ砂粒、高性能レンズについたひび割れ、それらでさえ、恋のような強い感情が彼のような人間に及ぼす影響にはかなわない。
しかし、そんなホームズにもたった一人だけいたのだ、「そのひと」が。それが今は亡きアイリーン・アドラーであり、必ずしも芳しくない評判で伝えられるその女性であった。

その当時、ホームズとは疎遠であった。私の結婚がなんとなくお互いを隔てて行ったのだ。
私はあまりに幸せであった。誰かを養う立場になるのも初めてだった。にわかに家庭人となった私は、注意の全てを自分の家庭に向けていた。
片やホームズはその漂泊する魂でもってあらゆる社会的形態を憎悪し、ベーカー・ストリートの住居で書物に埋もれる生活を送っていた。そして、高揚する気持ちとコカインの間を行ったり来たりしていた。犯罪の研究には相変わらずきわめて熱心であり、高い知性と稀有な観察力で手がかりを挙げ、警察が迷宮入りと決めつけた事件を片っ端から始末していた。
彼の噂は私にもかすかに伝わってきた。トレポフ殺人事件でオデッサに召喚された話、トリンコマレーに済むアトキンソン兄弟の悲劇で彼の果たした役割・・・そしてオランダ王室の一件では、彼は細心にかつ見事に使命を果たしたということだった。
無論そんなことは新聞を読む者なら誰もが知っている。しかしそれ以外に、かつての友であり同志であった男の消息を聞く事は殆どなかった。

戯れ訳『ボヘミアの醜聞』について

S2があんまり遅いもんで、暇つぶしに「ボヘミアの醜聞」を日本語訳してみました。
もちろん、過去に何度もプロの翻訳家さんが訳されているので、私ごときがしゃしゃり出る間でもないんですけど、まあ、英語を読む練習も兼ねて、ほとんど自分のためだけにやってみたようなものです。
もしまだ「ボヘミアの醜聞」を読んだことがなく、ちょっと興味があるという方がおられたら、笑って読んでやってください。

なお、これは私の好きなように訳した内容であって、一語一句間違いなく、というようなものではとてもございません。意味さえ違わなければ、どんどん自分の好きな言い回しに替えてしまっている部分もあるので、あまり深く追及しないで頂ければm(_ _)m

また、固有名詞は超テキトーです。本気にしないで下さいね^^;
(ボヘミア王のフルネームとか、知らんわ…)

Thursday 22 December 2011

シリーズ2のトレイラー☆


あ〜楽しみ♪
プロファイリング実況中継もパワーアップしてますね。

ただ、ジョンがこき使われてるのはどーも…^^;
こういう関係性になるのかなぁ。
なんかラノベみたい。

Wednesday 14 December 2011

プリオーダりました☆

シーズン2の本国放送日が決まったのを受けて、Amazon UKでもDVD発売日が決定したため、プリオーダーを入れてしまいました。きゃっ。

シーズン1のDVDは日本のAmazonではUS経由のリージョン1しか扱わなかったので、パソコンで見られなかったんですよね。しょうがないから下取りに出すつもりだった古いパソコンを出して来て、リージョンチェンジして見てました。まあ、その後Blu-rayも買っちゃったんですけど(爆)

シーズン2もBlu-rayは買うと思うけど(今のとこ、これが唯一日本のテレビでも見られる?)、どうせPC用の何かしらは欲しいと思うし、何より早く見たい!1/23発売らしいので、2月の頭には手元に届くかと。わくわく♪

見たらさっそく感想アップしますのでよろしく。
ただ、私はたぶんネタバレ全開ですから、お気をつけ遊ばして。

とか言いながら、私シーズン1の3話のコメンタリってまだ全然聞いてないんだよね(笑)
あれってドラマの音声がうすーく入ってるでしょ?どうしてもそっちに気をとられてしまうんだよな〜。それに、どうせコメンタリは早口で喋られたらわからんし。T_T
会話についてけなくなると、とたんにストレスなんだよね。

Friday 9 December 2011

シリーズ2の紹介がBBCサイトに

いつものAlexさんのサイトで知り、シリーズ2についての情報をつまみ食いしてきました〜。
詳細はこちら。
脚本はまた三人で書くんですね。最後のライヘンバッハを担当してるのがシリーズ1の第二話を書いてた人なんですけど、大丈夫なのかな(大失礼)
監督は今回みんな同じ人みたいですね。シリーズ1の1, 3話を担当した人。これは安心です。

ハドソンさんてEastEndersに出てたのねぇ。私も、イギリスに居たときもうちょっとTV見とけばよかったなぁ。英語が聞き取れないとこに来ると苦痛で、消しちゃってたんだよねぇ。

B.カンバーバッチとM.フリーマンのインタビューもありますよ。
「ゴドーを待ちながら」ってそんなbromanceな話だったっけと思っちゃった(笑)

Sunday 27 November 2011

Season 2にスタンフォードを出してくれ

書き忘れていたんだけど、スタンフォード、私、好きなんです。
でも、シーズン1の1話にしか出ないんだよね〜。
もっと出してほしい。チョイ役でもいいから。あの役者さんも好き。熊のぬいぐるみみたいでハグしたら気持ち良さそう。

いかにもいい人じゃないですか。
シャーロックの事を温かく見守ってるし。
"Bright young things like we used to be. God, I hate'em"
って言ってたけど、絶対シャーロックが頭にあるよね。^o^

初対面のシャーロックがやや不躾に
"Afganistan or Iraq?"
ってジョンに聞いて、ジョンがやや鼻白んで
「なんだコイツ?」
っていう顔つきでスタンフォードを見たとき、スタンフォードは優しい顔で、ジョンの無言の問いかけに答えるとも答えないともつかない態度をとる。
シャーロックを認めてるんだろうな、と思えるよね。
その後、ジョンに
「僕の事を話したのか?」
って聞かれたとき、
"Not a word"
って答えるんだけど、その時に試験管をいじって遊んでるのもかわいい。笑

きっと家ではいいお父さんなんだろうな〜。
こういう男性と結婚できる女性は幸せ。
彼とか、ハリー・ポッターのロンとかね。^-^
こういう人に惹かれず、こういう人から好かれなかった私の人生は、その点においてはヘタを打ちましたよ。
ええ。どうでもいいことですけどね。私以外の人には。苦笑

もう一人のいかにもいいお父さん、しかしちょっとスタイリッシュバージョンはレストラードですよね。
レストラード、紳士だよな〜。
彼の、ハドソンさんに対する態度がいいんですよ。
彼が"Study in Pink"で初めてシャーロックの部屋に入ってきて、話し終わって帰るとき、部屋の反対側に居たハドソンさんに軽く黙礼して去るんだけど、そのさりげない気遣いがステキ。
3話でコニー・プリンスのTV見ながらたわいもない話をするハドソンさんにも、困ったような顔をしながらニコニコして付き合ってあげてるし。
レストラードタイプの人になら惹かれたと思うんだけどな、私。
いや、ダメか。あっちから好かれないわ(爆)

Tuesday 18 October 2011

チェリーボーイ

おれんかさんのお薦めでIMDbの掲示板見ちゃいました。
Sherlock: Is He A...?

これ面白いですぅ〜。
もちろん、ジョークですが。

ぶっちゃけますと「女にも男にも興味のないシャーロックは、もしかしてチェリーくんなのか?」というスレッドなのです。

そうだと思う、思わない、両方の書き込みがあるんですが、その中で、
「サリー(ドノヴァン刑事)は過去にシャーロックと関係があったのでは?」
という説が出て来るのです。
(注:あくまでジョークですから!本気に取らないでくださいね)

・・・この説は面白いぞ。(妄想中)

つまり、サリーがシャーロックを「変人(Freak)」と呼んでやたらと牽制するのは、逆に意識してるからでは、というわけです。

いっや〜〜〜〜ないとは思うけどさ。でもそうだったら面白いな〜。
例えば、3話でシャーロック宛の電話がサリーの携帯にかかってくる場面あるじゃないですか。で、サリーが普通に取り次いでるでしょ。あれ、違和感だったんですよ。だって、もし彼と無関係ならば、
「なんでアタシの携帯にあんたあての電話がかかってくんのよ!」
とか思いますよ普通。結果的に取り次ぐとしても、最低、不気味がるくらいのことはするはず。
でも普通に取り次いじゃってる、しかもシャーロックが普通にそれを受け取っちゃってるってうのは、過去に2人がお互いの携帯番号を共有した時期があるからではないのか!?!?!ばばーん!!(一人で盛り上がり)
"Freak, it's for you"
って言った時のサリーの半分呆れたような顔が、
「まだあたしの番号にあなた宛ての電話かけてくるやつがいるのよね。困っちゃうわ」
と言っているかのようではないか!ちがうか。いやでも。

サリーだってバカじゃないんだから、シャーロックの実力は認めているはず、それなのにあそこまで毛嫌いしてるっていうのは、個人的感情が入ってると考えてもおかしくないです。いやー、だからといってその反動でアンダーソンに行かなくてもいいと思うけどね、サリー。なんでレストラードにしないんだ。いや、レストラードはなびかないか、良き夫、良き父って感じだもんね。惜しい。

ところでシャーロックがチェリーくんかどうかという話ですが、私は違うような気がします。だってモリーの髪型変えたの指摘する場面なんて、結構男のズルさ全開ですよ。
あれはチェリーくんにはできない芸当なのでは?

・・・すいません、全部妄想でしたぁ(てへっ)

Sunday 9 October 2011

学生時代のシャーロック


2話。

今、スクリプトを読んでいて思い出したけど、最初の方の、シャーロックとジョンがセバスチャンのオフィスで彼と面会する場面。
いかにもヤーな奴のセバスチャンが
「シャーロックとは大学が同じでね。この変人は人を見ただけでそいつの人生をまるごと語りだす。みんなを当惑させるものだから嫌われてた。食堂で、昨夜誰それとセックスしただろなんてバラされちゃね
などとペラペラ喋りだす、あの場面。

その時にシャーロックが
"I simply observed"
と応酬するのですが、いつもの元気がないのです。

いつもは自信満々で、嫌味たらしい彼が、何か弁解じみた居心地の悪さでそう言う。

たぶん、シャーロックにしてみれば本当に
「観察しただけ」
で別に悪意はなかった、ということを言おうとしたのかなと思います。

見ているだけで観察していない、というのはシャーロックのお得意のせりふですが、シャーロックの場合、見ることは直ちに観察することであって、
「見たくなくても見えてしまう」
の域なんだろうと思います。意識して観察しようとしてるわけではないんだろう。

目の前に露骨に見えているから、そう言う。
前の日にセックスしたんだなーと思ったから、そう言う。むしろ、
「おい、バレバレだよ、皆の前で。大丈夫?」
くらいの親切心で言ったかも知れない。でも、みんなは気持ち悪がる。

それは、弱冠20歳前後のシャーロックには、ちょっと傷つく出来事だったんじゃないかと。

あの、
"I simply observed"
を言った時のシャーロックの、一瞬の気弱そうな目つき、わずかに言い訳がましいトーン、そして見え隠れする屈折した感情。
ああ、この人、きっと大学で浮いてたんだな、geekっぽい感じで、食堂に居てもきっと食事はいつも一人だったんだろう、そういうのが見えて来る気がします。
「ふん。なんだよ。バカばっかりで。いいもん」
とか思いながら、思いっきり虚勢を張ってたことだろうと思いますが、それでも淋しさもあっただろうな。
シャーロックにとって大学時代って、きっと思い出したくないものなんじゃないかしら。

その後、1ヶ月で地球を2周した話の種明かしをしようとしたのに、セバスチャンが
「マンハッタンでしか売ってないケチャップでもついてた?」
などとあまりに的確に混ぜっ返す(このへんは腐ってもインテリ)ものだから、
「秘書に聞いた」
なんて見え透いたウソをついて会話を中断してしまう。

ああ、拗ねたよこの人、今分かりやすく拗ねたよ。
と思っておかしかった。


学生時代のシャーロック、どんなだっただろーなー。
きっと好きな女の子にも、観察しすぎて嫌われたりしてたんだろな…
(ニヤリ)


学生時代のシャーロックの話書いてみたいー!
なんか萌え要素多そうだぞ!笑

B.カンバーバッチのお料理教室

YouTubeを泳いでて見つけた動画。
カンバーバッチくんが玉ねぎのみじん切りに挑戦。



あ、あんた

どーゆー手の添え方してんですか!指切るぞ!!!

「オリヴィエの方が料理はうまいんだけど、僕もできるよ。母に教わったトスカーナ風チキン料理は得意だな」

ってそれ絶対ブラフだよね?たぶんこれまでの人生で包丁使ったこと5回くらいしかないよね?トスカーナどころじゃないですけど??


タマネギの次はトマト。トマト切るのもその添え手なんだーその添え手はデフォルトか!
あぶないっつーの!!!
トマトが見事にぐちゃぐちゃ^^; そして雑につかんで鍋に持って行く。まな板にまだトマトだいぶ残ってますけど?で、トマトつかんだその手どうやって拭くの?タオルないよ?ぜったいジーンズのそのへんで拭こうと思ってるよね?


っていう、突っ込みどころ満載の楽しいムービーです^_^


この、どこにでもいそうなイギリスのにーちゃんっぽい感じがすごくいいわー。
全然セレブな感じがしない。
演技めっちゃうまいのになー。

後、料理コーナーゆえ手元が大写しになりますが、彼の手の指の細さ長さがよく分かります。
あの、節のとこだけ太くなってるタイプの指の持ち主は、偏狭で友達が少ない事が多いと聞くんですが、ベネディクトくんはどーなのでしょうか。^o^

CMスポットドイツ語ver.


ドイツでのDVD発売に合わせたドイツ語バージョンを見ました。



おもしれーーー(笑)

シャーロックの声がゲキ違和感なんですが、私だけでしょうか。
なんか、小狡い感じで全然イメージ違うんですけど(すいません)

ジョンやレストラード、サリーの声は結構本人に近い声を選んであるのに、なんで肝腎のシャーロックだけ?^^;

あえて主役の声の雰囲気変えるってことは、よほど気に入らなかったんだろうなぁ。本人の声が。低すぎるのかなぁ。

後、この音楽カッコいい。本家のサントラにこれあるんだっけ?
いわゆるメインテーマを使わないっていうのは、ドイツならではのひねくれっぷりなのか。

シーンのチョイスも独特よね。
「スパイを頼まれたか?」
「いいや」
「なんだ、賞金を山分けにできたのに。今度言われたら考えろ」
のシーンをそんな最初に持ってくるんだねぇ。シャーロックの常識はずれな感覚にスポットあててるのかなー。

誰でも選びそうな、
「僕はシャーロック・ホームズ。住所はベーカー・ストリート221Bだ(ウィンク)」
の場面はちゃっかり黙殺されてますよね。

お国柄なのかな。
これはこれで面白い。

フランス語版とか見たいなー。
シャーロックがフランス語喋ってるのって、それももっそい違和感な気がする。
(そういう意味では、ドイツ語のほうがまだシャーロックの人格には合ってるね)

これ、2話のドイツ人観光客の場面って、やっぱそのまま流したのかな(笑)

シャーロックの涙目の理由


 2話。

スーリンの身の上話の場面。

以前から、この場面の時に妙にシャーロックの目がうるうるしてるのが気になっていた。こんなお涙頂戴のストーリーにまんまと泣かされるほど軟弱な人ではないなずなんだけどなー、と。

ワトソンのブログでも、この場面、「シャーロックも感動してた」みたいに書いている。

でも今日見直していたら、彼の目が、最初からうるんでる事に気づいた。
「ビスケットもほしいね」
って言って、驚いたスーリンがポットを取り落とすシーン。
この時にすでに目が赤い。

こりゃー、ベネディクト・カンバーバッチ氏自身の何かの問題(?)によるんだろうよ、きっと。そういうことにしとこう。彼(シャーロック)が泣くのはごく限られた場合だけにしてほしい。
3話でおばあさんが死んでしまった時は、TVニュース見ながら声がかすれていた。あれはよかったよね。自分とモリアーティと、両方に腹を立ててる感じで。

どうでもいい話でした。

なぜジムはマイクロフトを狙わないのか?


 標題のとおり。


なぜ弟に行くのか??


だって、マイクロフトの方が一枚上手。
そしてお兄ちゃんには組織がついてる。
同じく組織を持ってるモリアーティのcounterpartとしてふさわしい。


自分の頭の良さを証明したいなら、そして退屈をまぎらわしたいなら、マイクロフトの方が手応えがあるんじゃないだろうか。


そう思うと、カール・パワーズの一件でシャーロックを知ってから、ジムはずっとシャーロックにロック・オンだったのかも知れないなぁと思う。


これは恋だろうな。


シャーロックとジョンの関係は恋でないが、ジムは恋だと思う。
彼の気持ちの方が恋の狂乱を含んでいる。


シャーロックとジョンは恋じゃないなー。
男同士のいちゃいちゃだ。
恋じゃないから、あそこまでいちゃいちゃするんである。

恋には駆け引きがいる。
でも恋じゃなければ、駆け引きは考えなくていい。
好きだなと思う気持ちを、全然隠さなくていいのだ。


そういう、あけすけな空気が2人にはある。
女から見ると、ちょっと羨ましいかも。女同士でそういう空気は出せないもの。
なんでだか。


プールのシーンではジムはなかなかに凄んでいたが、とかなんとかいってジムはそう簡単にシャーロックを殺せないだろう。好きだから。
そのキモチワルイ「好き」が今後どう出て来るのかってゆーのを見てみたいなー。やっぱジムとシャーロックの関係性に興味があります。

シャーロックに登場する商品名


ブライトリングは言ってもよくて、iphoneは言えないbbcの登録商標の基準て何なんだろ。

ウェストウッドもいいのよね。

会社名と商品名じゃ違うってことかな?
だけど万年筆は商品名だったんじゃないかな。



まぁ、NHK版ではことごとく消されてましたけども()分かりやすいね。

ルパン vs ホームズ


 ところで、パイロット版と放送分を何度か見比べ思うんだけど、パイロットより放送分のシャーロックのほうが、確実に日本ではウケるだろうということ。
まぁ、本国でもそうなのかも知れないけど、日本ならもっと、かも知れない。
シャーロックの性格が、より細かく描き込まれているから。
そして私たち日本人は、ああいう癖のあるキャラクターが好きだ。

私が子供の頃、小学生が争って図書館から借りた本に、ルパンとホームズがあった。金田一シリーズもあったんだけど、なんといっても二大潮流はルパンとホームズ。
ルパン派とホームズ派は、面白いほどハッキリ分かれた。
ルパンもホームズも借りる、という子供は、あまりいなかったと思う。
必ず、どっちかに偏った。

私はルパンの方が好きだった。
大好きだったと言っていい。
ルパン全集を出していたポプラ社のシリーズは何度も読破し、当時ルパンの翻訳を扱っていた新潮文庫と創元推理文庫のシリーズも片っ端から買った。
創元推理文庫はその名の通り、推理小説を専門に扱う出版社で、当然ホームズのシリーズも出していた。どの本にも巻末に出版中の本の紹介がされていたのだが、私はその中でルパンが
「ミステリ・サスペンス」
というジャンルに分けられているのに対し、ホームズが
「本格推理」
のジャンルに入っているのがいつも不満だった。笑
なんか本格推理って、カッコいいじゃん。
ミステリって、ようは「本格推理未満」の別名?という感じがしたのだ。

そしてそれはあながち間違いでもなくて、ルパンのトリックというのは、確かにホームズほど精巧ではなかった。子供心にも、ご都合主義と感じる部分はあった。
実際、ルパンとホームズが双璧をなしている国は日本(とフランス)だけで、世界規模で見た場合、ルパンはホームズよりはるかに知名度は低かった。
ルパン作品のトリックの弱さに、大きな理由があったと思う。

それでも私はこよなくルパンを愛したし、私の世代の子供の半分がルパン派だったことは間違いない。
日本人はルパンのキャラクターを愛したんだと思うのだ。
女性には優しく、ハンサムでお洒落、人は絶対殺さないアンチヒーロー。
でも時々自分を過信して敵の罠にかかったり、愛する女性を殺されて茫然自失してしまうような、人間臭い部分も持っている。
それがたぶん、日本人の情緒性に触れるのだ。
ホームズの人間性も描写されてはいるが、話の焦点はそこではない。本格推理たるホームズ作品の要は何と言っても謎解きだ。

謎解きの緻密さと、謎はさておいても魅力的なキャラクター。
この二つが同じだけ人気を得ることのできる国が日本なんじゃないだろうか。

「シャーロック」が地上波放映されたらどうなるか見てみたいなぁ。笑

シャーロックとジョン


 今日も華麗にBD流し見中。
しかし10秒戻しをやりすぎたせいか、ディスクが固まった。どうすりゃいいのこれ。
電源引っこ抜くしかないの??
こういうバグが起きるのがハイテク機器っぽいよね。

それはそれとしてジョンはやはりいいなぁ。
あの生活力ある感じがたまらん。
今日は3話を見たんだけど、印象に残ったのはジョンが食堂でコニー・プリンスのテレビ付ける時に、店員や周囲(と思われる)に目で軽く合図した場面。
「ぼくテレビつけるよーキミタチ気に入らないかもしれないけど、付けちゃうよー
ぼく子猫ちゃんだから知らないもんね」
みたいな、イノセントぶりつつ強引という高度に矛盾した目線(笑)
でもね、これはマナーにかなってると思うんだな。周囲を無視して勝手に付けちゃってもいいんだしさ。いつでも周囲の人の存在をわすれない、でも極端に遠慮もしすぎない、ジョンのジョンらしい性格がでてる。もしかしたら、マーティンの性格もこうなのかもね。

そばにいるのが高機能社会不適応者なだけに、よけい際立つのかも^^;
だってシャーロックだったらこの場合、絶対勝手にテレビつけるもん。

シャーロックの場面で印象的だったのが、3話の冒頭、ジョンに怒って出て行かれて、腹立たしいやら淋しいやら、複雑な顔で通りを見つめる場面。
"Look, Mrs Hudson..."
と言いかけて、物憂げに首をかしげる仕草に思わず♪すてーいうぃーずみー(@ガラスの少年)と歌いだしそうになったよ。破片が胸へと突き刺さるのだよ。
すっかり、社会とのつながりをなくした小さな男の子というふうで、ジョンとは対照的。

それにしても、本家シャーロックの時代ならいざ知らず、現代で地動説を知らないのはやっぱりちょっとおかしいかな。宇宙がこれだけ近くなってるんだから、シャーロックの仕事にだって全く無関係ではないはず。少なくとも庭でテディベアが走り回ってるのとは違うよね^^; ま、「僕の HDには必要な情報だけが云々」っていうのは屁理屈で、単に天文学が苦手なだけだったりして。笑

パイロット版 『Study in Pink』


***強力なネタバレを含んでいます。注意!***









 やばい。



パイロット版の方が面白かった



このパイロット版を見て90分ものにしろと注文出したBBCの職員は誰なんだろう。
どうせお偉いさんなのだろうが、そいつは大きなミステイクを犯したのではないか。
60分でちょうどいい尺だったのに。


放送分の方が良かったのはシャーロックの部屋と、ハドソン夫人の立ち位置、そして携帯をスマホに変えた事だけだった。
パイロット版のハドソン夫人は、シャーロックの生活に入り込み過ぎててちょっと不自然。
そしてパイロット版のシャーロックの部屋はちょっとtackyだ。これは放送分のほうがずっと趣味がいい。


だけどストーリー運びはパイロットの方がずっとコンパクトで無駄がない。人間像もいい。
あのアンダーソンは同一人物?じゃないよね?パイロットのアンダーソンはまともで、サリーも木で鼻をくくったような喋り方はしていない。ジョンに「シャーロックに近づくな」と警告するときも、それだけ親身に聞こえる。サリーやアンダーソンがまともな思考で、シャーロックは異常者、その異常者を頼るレストレードがやや心もとない。放送分のジョンは、警告された割にはほとんど迷いもなくシャーロックのところに舞い戻っているが、パイロットのジョンは悩んでいる。

すごくいい。リアルだ。リアルなだけに展開が地味だけど、いちいち納得できる。
サリーとアンダーソンが一夜を共にしたって設定も、放送分の2人じゃ違和感あるが、パイロットの2人ならありそうだ。ま、どうでもいいけどさ。

ベルスタッフのコートはそのままで、下はネルシャツとジーンズのシャーロック、私はすごくいいと思った。すごくロンドンに普通にいそう。放送分ほど怪物的・非人間的な感じはしなくて、才気煥発な医学生(だったのか?バーツの)がそのまま30になりましたって感じ。かわいい。
どちらのシャーロックも子供だが、放送分のはさめざめと蒼く淋しそう。パイロットのシャーロックの中にいる子供は元気一杯だ。勇み足で犯人の手に落ちたりしているし。いや、かわいいよ。くどい??

薬を飲ませる動機も、パイロットではほんとに動脈瘤の腹いせにやってるらしく、客もべろべろに酔ってわかんなくなってる相手とかを選んでいる。とりあえずモリアーティのことは言及されないので、それだけの事件だ。
推測だが、この時点では、製作者側はモリアーティをまだ出さないつもりだったんじゃないだろうか。まだ1作目だし、今後徐々に、って感じで。
だから軽いかと言えばそうじゃなくて、むしろ、このサイズの話に合った始末の付け方をしてるので、全体として説得力のある話になってる。
放送分だけ見てた時でもちょっと違和感あったんだよね、銃で脅して薬飲ませるって、ちょっとさ、みたいな。しかもシャーロックと運転手の乗り付けた大学では、部屋の明かりは平気で点けるし、ジョンはあちこち走り回ってるのに、夜間清掃員が誰も気づかないってありえないだろ。パイロットではノーザンバランドstのレストランに来た時点で犯人はタクシーと目星つけてたけど、放送分じゃそれと分かるのはもっと後だよね。放送分のシャーロックはなんだかんだと細かい事に気づくわりには核心をつけない。あの完全無欠のキャラ設定で、それじゃだめだろう。パイロットのシャーロックならご愛嬌だけど。

やっぱり、本来60分の中身なんだと思う。これ。
光沢を1.5倍にして引き延ばしたって感じだな、よろず放送分のほうがキラキラしいし、派手、スタイリッシュ、女子受けしそう、そしてマイクロフトは美味しいところを持って行ってるけど、基本frillだわさ。話自体が変わってないから60分でまとめてる方のが重く見える。

そうそう、シャーロックとジョンのいちゃいちゃも、やはり控えめなんだけど、パイロット版では白眉がありました。
レストランの店主が「あれも計画のうちだよ」って何度も言い聞かせるのに、シャーロックが自分を呼ぶ声で「何かおかしい」ってジョンが気づくところ。
この局面であの感動シーンがやってくるのである、


おじいさん、クララが立ったわ!!!!


いや、ジョンですが。
ジョンはシャーロックが心配だったのである。そっちに気を取られて、足のことをまるっと忘れたのだ。

放送分だとただスリルに我を忘れただけだったもんねぇ。これは大きな違いだ。

その後のジョンの行動は不明、あの銃撃シーンでも誰が狙撃手かをつまびらかにせず、最後にさりげなくほのめかすだけ。ジョンが3割増カッコよく見えるよ。


まぁ、キラキラした90分構成ゆえに、イギリスで社会現象にまでなり、そのおかげで、私も日本で見られるようになったのではありますが


今さら60分構成には戻んないだろうな~。
90分のも、決して悪くはないんだけど。
ペースがどうしてもダレて来る気がする。


まぁ悲観しすぎかもね。
S2に期待しよう。

Sunday 25 September 2011

【答えて】BBC現代版 Sherlockバトン【回してね】


バトンなんて回すのもう何年ぶりかしらというくらいなんですが、やってみました。
いやー、なんか若々しくていいなー、バトンとか(しみじみ)

ただし、私から誰かに渡っていくかどうかは不明です;
かなり自分勝手な、付き合いの悪いブログだもんですから・・・すみませんm(_ _)m
オフラインでは、そこまででもないんですのよ(誰に対する言い訳?)

いや、改めて考えると私、オフラインでも外面がいいだけで付き合いはよくないかもな~・・・・

黙・・・・


・・・すいません。誰かもらってくれるお優しい人がいてくれれば幸甚でございます。


ソースははるはるさんのサイトです。バトンをもらったのはおれんかさんのサイトからです。

 Q1ドラマでお気に入りのシーンは?

おれんかさんの書かれている場面、私も全部好きなのです。
なので、あえて別の場面を挙げてみます。

・ 1話 冒頭、ジョンが一人ぼっちの部屋でぼんやりしている場面。マーティン・フリーマンが上手い、と思う所。

・ 1話 麻薬捜索に来たレストレードがソファでくつろいだ態度でシャーロックを迎えるところ。レストレードはシャーロックのお父さんみたい。

・ 1話 マイクロフトに「戦場を恋しがっているんだ」と言い当てられた時のジョンの表情。

・ 1話 シャーロックが薬を今にも飲もうとする場面。運転手の彼が言ったように、あれはシャーロックが退屈から最高に遠ざかった瞬間だと思うのです。自分の命を危険にさらすくらいのことをしないと退屈から逃れられない宿命、そのことに恐怖と、絶望と、恍惚を、すべて感じていたのではないかと。

・ 1話 ラストシーン、ジョンに「バカだからさ」と言われたシャーロックが嬉しそうに微笑む場面。

・ 2話 敵に捕らえられ、ようやく呪縛から逃れたシャーロックが真っ先にサラの縄をほどき、あまつさえ安心させようと声をかけている場面。君もやればできるじゃないか(何様?)

・ 3話は好きな場面が多すぎて絞れません。諸事情により録画もDVDもまだ好きなだけ見られているという状態じゃないもので・・・後日回答ということで!

Q2シャーロックとジョンとのお気に入りのBromanceは?
・ Bromanceという言葉にこだわるなら、2話のサーカスの会場の階段のところで痴話げんか状態の二人です。シャーロックがリアルに必死すぎて、見てるこっちまで汗かきました。笑

Q3シャーロックをキーワード5語で表すと?
・ 高速回転 溶鉱炉 fragile 群青 荒野

Q4ジョンをキーワード5語で表すと?
・ 一匹狼 しなやか 冒険心 ミルクティー 雑踏

*ジョンのキーワードかなり悩みました。シャーロックは孤高の雰囲気を持っているけれど実は一人がダメな人で、ジョンは逆に一人でも生きていける人だと思う。

Q5あなたの一番お気に入りの回は?
・ 最近、どの話も結構好きです。最初は、2話はちょっとクリシェが多すぎかなと思ったんですが・・・(いかにもなスーリンの悲劇とか、サーカスの装置が殺人機械になるとことか)。でも90分もあると、なんだかんだ言って楽しめる箇所がいくつも出てくるものですね。

Q6シャーロック、ジョン以外でお気に入りのキャラは?
・ レストレード!!!!!サラも好き。いかにもイギリス女性っぽい。サバサバして機能的、わりと遠慮がない。ただ、いまだに清い関係というのが不可解だ、もったいぶるタイプにも見えないんだが。

後もう一人忘れてた。スタンフォード!!!
ナニゲにシャーロックの変人ぶりに動じないもう一人のキャラですよ。

Q7サラとモリどっちが迷惑被ってる?
・ 迷惑こうむってるのは何といってもなぶり殺されかけたサラの方だと思うけど、サラは意外とタフなので、ただ乙女心を弄ばれてるだけのモリーの方が気の毒にみえる。

Q8モリアーティについて一言!
・ わりと直球でサイコだったので、ちょっとイメージと違いました。もっと見た目は正統派で、でもよくよく見ると限りなく狂っている、という感じかと。でもこのモリアーティでいくなら、ひたすら姑息な手を使い、しかも組織的に動ける相手に、シャーロックとジョンが基本二人で立ち向かうという、かなりワクワクな対決が見られるかな。とにかく、シャーロックとモリアーティとの関係は、シャーロック&ジョンの関係と同じくらい物語の大きな軸だと思うので、製作者サイドに期待大でございます。

Q9マイクロフトについて一言!
・ この人の存在がこれほど大きいのは新しいし面白い。好きなのに仲良くなれない兄弟の微妙な綾をもっと描いてほしい。

Q10ドラマの感想、第2シリーズへの希望など、何でもどうぞ!
・ ジョンが軍人という側面はよくフィーチャーされるけど、医者としての能力がイマイチ見えない(汗)ので、S2ではぜひ見事な応急手当の腕前でも見せてほしいです。ジョンの見せ場がS1は少なかったので残念。
・ あまりBromanceに走り過ぎないようにしてほしい。安っぽくなってしまうので。今ぐらいがギリギリだと思います。


以上。
いやー書いてて楽しかったですぅ(*^_^*)
ありがとうございました!

There will be always something lost in translation


 何かと気の滅入る午後なのでシャーロックを見返している。

音声切替を使うと録画したものでも英語で聞けることを、今日ようやく取説引っぱりだして確認して、英語で聞いている。
しかし、シャーロックの早口英語は手強い。英語字幕ほしい。

ああ、でも、
「英語でこう言っていることを、日本語にこう変えたんだな」
っていうのを発見していくのが、すごく面白い。
大体、こういう話題で皆が言うのが、いかに翻訳がまずいかとか、せっかくの凝った言い回しが落ちてるとか、そういう批判ばかりなんだけど、私は滅多にそういう感想は持たない。
そりゃたまには、さすがに文句言いたいものもあるけど、たいていの吹き替え原稿や字幕翻訳は、がんばっている。
異なる感性から生まれた言葉が、そのままストレートに交換できるわけがないので。
翻訳すれば、いろいろなものが落ちる。原語ならではの良さも失われる。それは必然だ。
落ちたものを補う方法は、訳者によって違うだろう。人によって違うから、そこはもう補わないという選択肢もありえる。
それは仕方のない事だ。

だから、私は、上手く置き換えられている方にむしろ目が行く。
なるほど、こういう日本語に当てはめたのか、なるほどね。
これは上手いなぁ、アートだなぁ、と感心するものもよくある。
翻訳を担当した人たちの、工夫とか、苦労とかが、変換された言葉から見えてくるような気がするのだ。

そういうのに気づくのが、めちゃめちゃ楽しい。

アートだと思うんだ。ほんとに。

私もがんばりたいなぁ。そういう風になりたいなぁ。

Season 1 コンプリート


 さて、全話見ましたよ。全話っていっても3話だけだけど(笑
一話90分(しかもCMありましぇん)なので、ちょっとした映画を3本見たような気になりますが。

2話だけ監督が違うそうで、そのせいかどうか、2話はあんまり印象ないな、あまり面白くなかった気がする。
3話は面白かったです。
ホームズが若いからモリアーティも若いんだけど、一瞬、ちょっと違和感。モリアーティって、あんなnerdyな感じかなぁ。
まあ、そのうち慣れるんでしょうが。

しかし、ワトソン君は3話とも誰かに拉致られてるなー。
大丈夫かこの流れ。ワトソンが拉致られ、ホームズが助け出すというパターンにしないでもらいたいもんだが。腐か。腐なのか。

1話はワトソンも見せ場があって、ホームズと対等な感じだったけど、2話はほとんどお荷物だし。ルパン三世も銭形がただの狂言回しじゃつまんないので、やっぱり対等な関係性ってほしいです。私はマーティン・フリーマンの演じるワトソンが大好きなので、肩入れしちゃう。

もちろんホームズのベネディクト・カンバーバッチも素敵ですよねー。それなりにキャリアあるみたいなのに、全然知らなかった、イギリス演劇界は奥が深いぞ!(←ハリウッドの俳優も殆ど知らない人)黒髪がなんともセクシーですが、元々の髪の色はジンジャーなんですね。ジンジャーもいいけど黒もいいね。おせちもいいけどカレーもね。

いかにもなハンサムさんというよりはちょっと個性的な顔立ちですが、ホームズのようなエキセントリックな役をやるとぴったりです。目が紫がかった青ですごくきれいです。^^
ただ、これでホームズのイメージばかり付きすぎなければいいけど。まだ若いんだし、いろんな役を演じていってほしいです。

やっぱりねー、世の中、税金とか放射能とか家事とか老化とか、疲れることばっかりある中で、魅力的な男性の存在は明日への希望ですよ(しみじみ)
特に私より若い世代で魅力的な男性を見てると、なんか嬉しくなります。
私が病気で死にそうになっても、魅力的な若い男性が活躍しているのを見れば、ああこれで世界は安心、と思いながら死ねる気がする。

ということで、がんばってくれ、カンバーバッチくん。

ところでYouTubeで見たんだけどマーティンがBAFTA賞を獲った時のインタビューで、
"I'm very very chuffed"
って連呼してて、初めてchuffedという単語を知ったのだが、やはりイギリス限定表現らしく、コメント欄で
chuffedだってーーー!きゃーーー☆」
と萌えているアメリカ女子(推定)多数。

やはり「萌え」は世界共通だなと思って笑っちゃった。

First Impression


 何かの雑誌で告知を見て、何となく録画予約しておいた「シャーロック」。
BBCが去年(2010年)に発表した現代版シャーロック・ホームズです。
現代的なガジェットを駆使するホームズっていうのは分かりやすいんですが(パーシー・ジャクソンが現代版ファンタジーであるように)、この設定のオマケは、ホームズのような人が私の生きてる今の時代に、同じように生きてたら嬉しいなっていう、そういう空想を許してくれるところですね。^^
それに、単に現代に設定を置き直しただけでなく、実に巧く、新しい世界を構築しています。
さすが本家イギリス、どんな形であれホームズを作るとなれば半端ない集中力を見せるな、と実感しました。
やはりホームズの世界観がDNAに組み込まれてる人たちなればこそでしょう。
それと同時に、何度も作りかえ焼き直しをされてもなお、魅力の尽きる事のないホームズというキャラクターがいかにオリジナルな存在であるか、またその造形がいかに精緻であったかを実感しました。
元々の作り方が素晴らしかったからこそ、今でも新解釈が出てきて、それが人気を獲得することもできるわけですよ。
コナン・ドイルはやっぱりすごかったんだなーと、まともに彼の作品を読んだことのない私でさえ思います。
ワトソンの配置がまた、上手いんですよねー。
やっぱりワトソンあってのホームズだし。
マーティン・フリーマン、いいわー。背が低い人ってsexy
うちの夫は一目でラブ・アクチュアリーに出てた人だと見抜いていましたが。君、観察力すごい。

シャーロックの役者さんは全然知らないけど、エキセントリックな感じが出てていいですね。
ベネディクト・ティモシー・カールトン・カンバーバッチ。ごつい名前だなぁ。ローマ法王にでもなれそうだ。笑
「シャーロック」第一話を見てあまりに気に入ってしまい、ぜひ詳細なブログを書こうと思ったんですが、ググっているともうすでに、各方面から絶賛の嵐ですので、やめることにしました。^^;
二話、三話はもったいなくてまだ見ていない(シーズン1は全三話)んだけど、世の腐女子にも温かく迎えられているそうで、世の中は変わったよな。(苦笑)
ワトソンの声を当てている人は通称「BL界の帝王」だそうですし。トホホ。(※声優さん自身は、すごく上手いです。ジブリやってるタレントとは比べ物にもなりません)
BLって、昔は影の存在でしたけど、ビバルイとか見てても、ほんと日向にでてきたよなって思います。
あの当時は思いもつかなかったんですけど。ほんと、時代は変わった。
「シャーロック」にしても、ワトソンのブログがちゃんと実在していることとか、それにシャーロックが書き込みしてたりとか、そういう芸の細かさは、本来サブカルチャーが得意としてきたことだったんじゃないかな。
世の中全体がサブカル化してるなっていうのは、最近よく思います。